座禅を組んで

(中略)ついにドレスデン市郊外にある大きな監獄の独房に入れられた。そこがドレスデンの監獄であることを知ったのは、一緒にいたドイツ人捕虜が、ここは死刑囚を入れる有名なドレスデンの監獄だ、と教えてくれたからだ。
 ここでの毎日の生活は、私の人生にとって最大の教訓となったようだ。私は、不眠と精神錯乱から身を守るために、一日の大部分を座禅を組んで過ごした。ソ連兵が不思議がってのぞきにくることもあった。また歩調をそろえた足音が廊下に聞こえる時、ああ誰かが死刑執行されるのだな、と考えたりもした。(p.52、l.5-l.12)