私のゆく道はここにあるのだ

強度の精神衰弱になってしまった。
 ところが、ある日、一人のドイツ青年がやってきて、私は有無もいわさずに、炭鉱地帯の中心にあるエッセン市に連れて行かれ、炭鉱の地下六百メートルの採炭切羽(きりは)で、二時間ほど炭塵にまぶされながら座らされた。
 (中略)必死の形相でピックハンマーを握りしめて、炭層に挑んでいる姿が、からだにしみ込むようなそこひびきと、一種異様なにおいとともに、灰色のもやの中から模糊(もこ)として浮かび出てくる情景は、まさに人間が自然と一体になってうごめいているとしかとれないのだ。
 (中略)
 私のゆく道はここにあるのだ、と悟った瞬間、私は、この高貴なる発見に歓喜の涙が頬を伝わるのに気がついた。(p.28、l.3-p.30、l.6)